日々雑感 日本の研究開発力は落ちているのか

 最近の神戸大学の研究で日本の特許申請件数の低下と日本の研究開発力の低下を結び付け、その原因がゆとり教育にあるとする論文があるようです。しかし、特許申請件数の動向だけで研究開発力を論じても意味がなく、技術貿易収支や論文の被引用度などから総合的に判断する必要があります。

 1980年代に家電や自動車が海外で売れまくっていたことで日本の技術力が優れていたと思っている人が多いようですが、下の二つの図を見てわかる通り80年代の日本の技術貿易収支は全体的には赤字で、製造業では自動車のみが黒字でした。
日米ライセンス収支 特許庁ホームページ
特許庁ホームページより

技術貿易収支
平成19年科学技術白書より

そして90年代後半になってようやく全体の技術貿易収支が黒字化し、現在も黒字額が増え続けています。技術貿易収支の黒字が増え続けているのに日本の技術力が低下しているはずがありません。また、下図が日本の科学論文の相対被引用度の推移ですが、アメリカが高いレベルで横ばいが続き、欧州や日本以外のアジアの国は被引用度が長期的に上昇してきたにもかかわらず、日本のみが引用されるより引用するほうが多いという低いレベルで横ばいが続いてきたことがわかります。
被引用度
平成22年科学技術白書より

そして最近になってようやく相対被引用度が1を超えましたが、欧米と比べて劣っていることに変わりありません。論文の質で見る限りもともと日本のレベルは低く、最近になってようやくマシになった程度だということがわかります。この技術貿易収支と論文の相対被引用度の推移を見る限り、日本の研究開発力が下がったとは言えず、むしろ上昇していると言えます。現在の日本の研究開発力が落ちたように見えるのはバブル期に資産価格が上がって景気が良かっただけなのに技術大国だ、モノづくり大国だなどと自分の実力を勘違してきたことに気づいていないことが原因で、そもそも技術貿易収支が赤字だったバブル期の日本が技術大国だったはずがないのです。

 神戸大学が取り上げた最近の日本の特許出願件数の減少は特許庁ステータスレポート2016の第一部第一章に書かれているように単に企業が特許の量より質を重視するようになっただけで、研究開発力の低下とは関係ありません。日本では一部の学者が日本経済の低迷をゆとり教育のせいにしたがっているようですが、むしろ日本の論文の相対被引用度はゆとり世代が社会に出るようになった最近になってようやく1を超えました。論文を引用されるより引用するほうが多かった時代の学者が現在の世代を学力低下などと批判する資格はないのではないかと思います。
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日々雑感 無意味な技術ナショナリズム

 東芝の半導体に出資する企業をめぐって日本の技術を守れという人がたくさんいるようですが、そもそもイギリスのARMを買収した日本が文句を言う資格はありません。

 いまだに日本はなんでもかんでも技術において優れていると思っている人がたくさんいるようですが、現在最も伸びている情報処理の基幹技術において日本はほとんど関わることができていません。PCやスマートフォンにおいてソフトとハードをつなげる基幹技術にあたるのがOSですが、PCではマイクロソフト、スマートフォンではアップル・グーグルが主導権を握っています。また、ハード全体を制御する半導体ではPCにおいてはインテルのCPU、スマートフォンにおいてはクアルコムのSoCが主に使われています。こうしたデジタル製品における基幹技術において、日本は作ることすらできず輸入に頼っているのです。そうした中でソフトバンクがイギリスのARMを買収しましたが、ARMの技術は多くのスマートフォンのSoCで使われており、今後伸びるとされているIoTや車載向けの半導体でも使われることが予定されています。東芝のNAND型フラッシュメモリーは確かに優れた技術ですが、これはCPUやSoCに比べれば枝葉の技術にすぎず、ARMを買収できたのであれば東芝の半導体事業やシャープを買われてもおつりがくるくらいなのです。そのARMを買収した日本が東芝の半導体事業売却においてあれこれ文句をつける資格はありません。日本が技術を重要視するのであれば枝葉の技術を守るのではなく、技術を売った資金で基幹技術を持った企業を買収することを考えるべきでしょう。

 現在の日本は最も伸びている情報技術において取り残されており、日本は技術を守る側ではなく技術を買う側です。現在の日本のエレクトロニクスの低迷は技術力が落ちたのではなく、技術に対する過信と偏狭な技術ナショナリズムが引き起こしているのです。

今週の見通し

 今日の日本市場は休みです。ドル安円高はまだ続くと考えているので現状のポジションは維持します。

日々雑感 総合電機は名門だったのか

 東芝の経営危機でメディアではあの名門がここまで駄目になるのかといった論調が多いようですが、企業業績から見れば東芝はじめとする総合電機は昔から名門でもなんでもありませんでした。

 企業の営業利益率は世界の平均で10%程度、名門企業は15~20%くらいあるのが普通ですが、下図を見てわかるとおり日本の総合電機は平均で3%、景気のピークでも5%程度と世界平均の半分以下しか出せない経営を続けてきました。

主要企業営業利益率

ここ数年メディアでは日本の総合電機の経営がものすごく改善しているかのように報道していましたが、日立が若干良くなって営業利益率が6%台に上がった程度で総合電機の収益性はたいして改善していません。日本の総合電機は業績面から見れば昔から名門でもなんでもなく、言ってみれば全く勝つことができず、あるのは歴史だけという90年代の暗黒時代の阪神タイガースのようなものでした。そしてその阪神が変わるきっかけになったのが外から人を連れてくるようになってからで、監督として星野仙一、選手として金本知憲らが加入して強くなり、一時期は優勝争いの常連にまでなりました。最近はまた内輪で監督を出すようになって弱くなっていますが、外から人を連れてくることが組織を強くすることは明らかです。

 しかし、日本の経営は内輪で経営者を出すのが当たり前になっており、経営危機になっても外から人を招聘することは滅多にありません。東芝問題では東芝の経営陣が批判されていますが、そもそもたいして業績が良くないのに内輪で経営者を出し続けていたということ自体に問題があるのです。そして業績が良くないのに内輪で経営者を出し続ける企業は日本にもたくさんいますし、東芝の経営危機を東芝単独の問題としてしか捉えることができないのであれば、これから第二、第三の東芝が出てくるのではないかと思います。

ポジション追加

 目先は下げそうなのでドル/円を113.35で売りました。想定通り下落トレンドに入れば一週間程度保持する予定です。
プロフィール

Author:パラケルスズ
アラサーの投資家です。長期で持つほど気長ではありませんが、毎日モニターを凝視するデイトレも面倒くさいので、レバレッジをきかせつつ2、3週間保持するトレードを行っています。

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